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【百合ブログ】百合Edge R&D 

人間無骨のブログ。百合のレビューをする。 Twitter:@ZephyrMusician

弟の夫、百合の葛藤

今回は弟の夫について語りたいと思う。

初回から百合作品ではなくて申し訳ない。
だけどこの作品は百合を語る上では避けては通れない要素を含んでいる。
 
だから百合好きな人にもよんでほしいな。
 
さて、まずは百合厨がしょっちゅうエンカウントする言葉から始めよう。
 
葛藤のない百合は百合じゃない。

この言葉をあなたはどう思うだろう?
百合における葛藤云々はもっぱら否定的な文脈で使われるものだと認識している。
葛藤ばかりを書くのは差別的だ!みたいにね。
 
けれど、こうした言葉をたびたび見かけるというのは、それだけ百合…というか同性愛には葛藤が伴うものだと考えている人が多くいることのあらわれではないだろうか。

葛藤とは、つまり同性同士が愛し合ってはいけないという考えのことだ。
今の日本には同性愛を特殊、行き過ぎたものの中には異常だとする常識が根強く存在していて、ゆえに百合には葛藤があるべきだし、それがリアリティだと思う人が現れるのだと思う。

百合には葛藤が~に対しては、『作品におけるリアリティとは、読者を納得させられるだけの説得力であって、現実を書くことではない』と反論しておくけれど、今回の本題はべつにある。

もしも異性愛者のあなたが、同性愛者に会った時、自然に接することができるだろうか?

当たり前だ!と怒る人もいるだろうけど、少し自信がない人もいるんじゃないかと思う。
少なくとも、自分は、正直自信がない。
頭のどこかで、自分とこの人は違うのだと意識してしまう気がする。
マイノリティを差別したり偏見の目で見るのは誤りだという良心、あるいは常識をもっていても。

こういう『身構え』のようなものは、実際にその人と接していく中でどんどん解消されていくものだろうけど、自分とは違うもの、未知のものへの『身構え』は確かにある。
 
前置きが長くなってしまったけれど、田亀源五郎の弟の夫はそういう身構えに切り込んだ、リアリティのある作品だ。
 
あらすじは連載元のサイトから引用しよう。
 
弟の結婚相手はカナダ人、そして男だった!?
弥一と夏菜、父娘二人暮らしの家に、マイクと名乗る男がカナダからやって来た。マイクは、弥一の双子の弟の結婚相手だった。「パパに双子の弟がいたの?」「男同士で結婚って出来るの?」。幼い夏菜は突如現れたカナダ人の"おじさん"に大興奮。弥一と、"弟の夫"マイクの物語が始まる——
 
さて、弥一はマイクを拒絶したり差別したりしないだけの良心は持ちあわせている。
けれど頭のなかでは彼をホモ呼ばわりもするし、時には心理的な距離を置く。かつては弟のカミングアウトも深く受け止めることができなかった。
 
それは同性愛者に対する身構えだ。
 
弥一はマイクが訪れた時から、それに向き合うことになっていく。
 
弟の夫は、そういう身構えが少しずつ無くなっていく話になるんじゃないかと読んでいて感じた。
同性婚の解説ページなんかもあるが決して説教臭い政治的に正しいだけの作品ではない。
 
はじめから無邪気にマイクを受け入れている弥一の娘の存在は、そういうある種の緊張感がある空気の中で癒やしだし、『愛する夫を失ったばかりの男が彼にそっくりな双子の兄に出会う』というシチュエーションは、インモラルな何かがあるんじゃないかと思わせるには十分だ。(下世話だけども!)
 
そのほかにも、訳ありっぽい弥一の家庭事情や田亀氏の端正な描写はエンターテイメントとしても、この作品をしっかり成り立たせている。

決して大冒険があるわけではないが、弟の夫はとても続きが気になる作品なのだ。
 
弟の夫はまだ月刊アクションで連載中だから、最後にどんな着地点になるのかはわからない。
けれど、百合…というか同性愛には葛藤が必要かどうか考えたことのある人は買ってみてほしい。
 
リアリティのある葛藤が、そこにはある。

なんだか真面目な話をしたので次回は百合え■ち作品について紹介したい。女の子に痴漢するお姉さんというワードにたぎるなら、要チェックだ!