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【百合ブログ】百合Edge R&D 

人間無骨のブログ。百合のレビューをする。 Twitter:@ZephyrMusician

その花びらにくちづけを にゅーじぇね!-その花のこれまでとこれから

世紀末の後にやってくるのは新世紀!

「にゅーじぇね!」の到来を見ろ!! Witness Lily!!!!!!!!!!!!

 

6月末、「マッドマックス・怒りのデスロード」の興奮さめやらぬ中、俺はソフマップに駆け込み「その花びらにくちづけを にゅーじぇね!」を購入した。残念ながら予約特典は永遠に死蔵されることだろう。

よって今回はにゅーじぇね!を語ろう。重要な部分は微妙にぼかしているが物語の結末まで触れているのでネタバレには注意だ。

 

その花びらにくちづけを(以下その花)は2006年に第一作目が発表された。

質の高い百合え■ちに特化した内容から百合厨たちの支持を受け、現在では商業ベースでの作品発表も行われている。

基本的に舞台は聖ミカエル女子学園を中心としていて、登場人物も学園の生徒や教師であることが大半だ。

本作ではお姉様×妹・王子×お姫様といった百合の王道からロリおね・クーデレのような変化球まで、様々なカップリングが拝める。

 

とりあえずその花って名前は聞いたことあるけどやったことないって人は公式サイトでこれまでのほぼ全てのCP(最新作を除く)を紹介しているので、そっちを確認してみてくれ。↓

ふぐり屋 Official Web Site

 

現状でその花シリーズは3つの路線がある。

一番メジャーな聖ミカエル女学園を舞台にしたシリーズ(便宜的にミカ女編と呼ぶ)

そしてミカ女附属の看護学院を舞台にしたシリーズ(同じく看護学校編としておく)

でもってミカ女編の流れを汲んで、ミカ女の附属中を舞台にしたにゅーじぇねだ。

その花シリーズは一貫していちゃいちゃ幸せな百合えっちが基本になっているけれど、ミカ女編と看護学校編では担当するライターと絵師が違うので印象は結構異なる。

可愛らしくてとにかくいちゃつく女の子が見たいならミカ女編をおすすめしよう。

どちらというと男性向けの肉感的な絵柄に親しんでいて、なおかつ、ある程度カップリングのストーリーも楽しみたいなら看護学校編の方があっているだろうな。(まぁどっちも大筋では細けえことは抜きにしてちゅっちゅしてるけど)

 

さて、では「にゅーじぇね!」はどういう作品なのかを解説していこう。

舞台は上記のどちらでもないミカ女の附属部(おそらくは中学校。)

登場人物は全員18歳以上、分かっているね?

そこで三組のカップルが登場する。

 

庶民と令嬢な小野原葉月×蘇枋愛実。

幼馴染み同士の、三澤渚×高幡莉菜。

姉が妹に依存しがちな双子の姉妹、君島藍×君島亜弥。

まず進められるルートが葉月×愛実のルートで、このカップリングのストーリーを最後まで閲覧すると後の二組のルートも進めることができる。

 

選択肢があっても基本的に大きく展開は変わらないので、特定のカップリングのルートを見逃すことはまずありえないだろう。

葉月×愛実ルートの後、どこで他のカップリングに分岐するのか微妙に分かりにくいのは気になったが……。

 

そういうわけで初見は必ず葉月×愛実ルートから閲覧するわけだが、これまでのその花をプレイしている人にとっては、このルートからすでにこれまでとは違う色合いを強く感じることになるだろう。

 

これまでとその花と違って、にゅーじぇねでは「お嬢様」という要素をかなりクローズアップしている。

ミカ女の生徒は大半がお金持ちな深窓の令嬢で、もともと金銭感覚は浮世離れしているが本作では「お嬢様」という属性をより掘り下げた描写が多い。かなり極端というか大袈裟にお金持ちを描写しているので、どちらかというと貴族とでも表現するべきかもしれない。

貴族とは、ただ裕福なだけではない。その華麗なる一族には多くの人間を率いる責任や跡継ぎの問題、おこぼれにあずかろうとする輩の存在がまとわりつく。

 

にゅーじぇねではそういうお金持ちのドロドロした部分にもかなり踏み込んでいる。特に葉月×愛実のルートはそれが顕著だ。

葉月は庶民ということを強く意識した台詞が多いし、名門の跡継ぎとして生きることを求められている愛美はそういう葉月との身分差に悩むこともある。

愛美はミカ女附属で完璧なお嬢様と見られていて、積極的な性格も相まって葉月をリードするように振る舞うけれど、実際は彼女が葉月に依存している。という構図は中々においしい。

 

謀略渦巻く大人たちの世界を乗り越えて添い遂げようとする二人は美しいと思うし、これからの展開も期待できる。

ただ、裏を返せば本編のボリュームはやや足りない印象もあった。

設定がかなり長編向けというか、今後も色々ありそうなことを感じさせるカップリングなので、百合えっちよりもそちらが気になってしまった。

愛美と彼女の家族の決着は続編なんかで触れられていくとは思うが、もう少し突っ込んでくれても良かったかな……とは思う。

 

さて、次は君島藍×君島亜弥のルートだ。(葉月×愛美ルートの後は自由に進められるので、三澤渚×高幡莉菜ルートを先にプレイすることもできる)

 

藍×亜弥ルートだが、まず一番に言っておきたいことは「姉妹百合」ということだ。

実はこれまでのその花で姉妹が取り上げられることはなかった。

ちなみに他の百合ゲーでも意外と姉妹百合は少ない。インセスト(近親相姦)というテーマは同性愛以上に扱いが難しいということだろうか?

百合に限らず兄弟姉妹と関係する話だと、『実は血が繋がってなかった』などインセストから外れようとする動きもあるが、藍と亜弥は血がつながった双子だ。

 

さらに、亜弥は特殊な事情も抱えていて、二人は「血がつながっているのにこれまで一緒に生活してこなかった」という境遇に身を置いている。最近まで、二人は離ればなれだったのである。

 

双子というモチーフは心の距離の近さが持ち出されやすいが、藍と亜弥のルートはそれとは逆に二人の心の距離がどのように縮まっていくのかを描いたルートだ。

 

引き離されて、欠けた心をどう埋めていくのか。それが藍と亜弥のテーマになる。

亜弥を離したくなくて固執する藍と、その気持ちをどう受け止めていいのか分からない亜弥の決断を見届けてほしい。

設定に面食らう部分はあるけど、双子姉妹百合の珍しいアプローチはみられるだろう。次回作ではインセストにも触れていきそうで、重い話になりそうだが……。

あと個人的にビジュアル面が結構好きだったりする。

シンメトリーなデザインではないが、ちゃんと双子であることを意識させるというか、二人で一つというイメージがあって好きなの。

 

 

最後は三澤渚×高幡莉菜のルートを紹介する。

この二人も葉月と愛美のように身分差があるんだけど、渚と莉菜の場合は二人の親が上司と部下の関係でもある。そのことが、渚の心情にも影響しているのがポイントだろうか。

渚は卑屈になりすぎるきらいがあって、自分よりも相応しい人間が莉菜にはいるはずだと思って莉菜と距離を置こうとする。もちろん、渚が大好きな莉菜はそれを赦さないのだけれど。

 

渚は陸上部所属でショートカットも眩しい、いわゆる王子様系のビジュアルだが、ハーフの出自をからかわれたトラウマもあって引っ込み思案というか、冷静でやや大人しい性格をしている。

一方で莉菜は金髪ロングで結構高飛車な振る舞いという女王様っぽい見た目だが、渚のためなら一直線に進んでいく意思の強さと自分の思いへの確信があって、時には暴走するぐらいそれを渚へぶつけていく。

 

二人のルートは、そんな対照的な渚と莉菜がお互いの食い違いを超えていく話のように思った。

別々の価値観があるから、ぶつかり合うし、思い合う。

価値観の違いはにゅーじぇねは全体に貫かれているものだが、莉菜と渚の場合は二人が幼馴染で昔から相思相愛ということもあって、彼女達の方向の違いというものを最も掘り下げたシナリオになっているように思う。

 

その花も第一作目がリリースされてからもうすぐ十年となる、驚きだよな!

十年もたてば、百合に対するトレンドというものも変わってくるし、百合厨たちが求める百合も十年前と同じではないだろう。

 

にゅーじぇね!は来るべき百合新世紀に向けて、その花の新しい方向性を模索する作品だったように感じる。

 

くっつくまでやくっついた後のシナリオを練ったり(これまでのその花がシナリオを重視していなかったとは言わないが、どちらかというと女の子同士のいちゃこらを追求した内容だったことは間違いないはずだ)よりミカ女の背景を書いていこうとした試みは、面白い。

キャラデザインもイラストレーターがこれまでの(ぺこ氏が手掛けた)その花に近いけど、また異なるイメージで仕上がっていると思うしね。

 

ただ、不満点がゼロなわけじゃない。

値段的な兼ね合いもあって、どうしても各カップルの話が短いように感じる。シナリオをより重視する形でこれはもったいない。値段としてはこれまでの同人レーベルの話×3といった具合なので妥当ではある。

初回からフルプライス(9000円前後)というのも冒険だろうし、しょうがない面はあるのだけど……。

 

それと、個人的にはにゅーじぇね!と銘打つならBGMも一新してほしかったかな、とは思う。

同人レーベル時代からやっていると、どうしても耳が飽きてくるからね……。

ただ、BGMに関しては昔から使われてきた音源の方がいい! という人もいると思うし、個人の好みによる部分が大きいだろう。

 

守旧と革新のバランスというものはあらゆるシリーズものが抱える難しさだと思う。

にゅーじぇね!は新しいその花というものにかなり意欲的だと思うし、これ一作で終わるのはあまりにも惜しい。

可愛らしい絵柄とすてきな百合え■ちという魂の部分は同じなので、イラストレーターとライターの変更にしり込みする層も手に取ってみてほしいな。

お値段分の価値はあると思うからね。

 

その花びらにくちづけを にゅーじぇね! 【特典なし】

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