流行百合大賞2015-新たなる流行・新たなる百合
2015年も残りわずか!信じらんねえ!
巷じゃ流行語大賞にノミネートされた言葉も発表されたし、これに便乗するのが企画力に欠ける我がブログの在り方ってもんだ!!!(もう既に遅いんだよなぁ……)
ついでに今年の百合を総括することもできて一石二鳥!!!
個人の勝手な企画だから元ネタと同じく「こんなの全然流行ってねえよボケナス!」という突っ込みはご容赦願いたいねッ!!!!
ノミネートNO.1
新田ーニャ
――ンミナミィ…!!!!
新田ーニャとは「アイドルマスター シンデレラガールズ」(以下デレマスと略称)の登場アイドル、新田美波とアナスタシアのカップリングを指す。
(「みくりーな」とか「みかみりあ」とか「うずりん」とかここで挙げてないCPはどうなってんだ!?オラァア!!!と言いたいだろうけどゆるして)
新田ーニャはデレマスのアニメで、二人がラブライカというユニットを組んだことから見出されたCPだ。アニメが初出となるCPで、デレマスの放送時期(2014年冬~2015年春)からして2015年のトップ百合バッターとして最適だ。
もともと歩くセックスというマリリンモンローでもここまで露骨ではない仇名をもっていた新田美波に百合需要が生まれるとはだれも思ってもみなかっただろう。
美波とアナスタシアとの年齢差や本編での仲睦まじい様子が燃料として強力だし、二人の関係性の解釈に幅を持たせやすいので、ほのぼの・シリアス・えっちなものまで話を作りやすい応用力の広さがCPとしての強みといえる。
もともとジャンルに棲んでいる人口が多く、デレマスのアニメが分割2クールだったことや純粋にクオリティが高いものとして評価されていること、その後も「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」(デレステ)などで継続的に燃料投下されたことも大きい。
総合的に、2015年では最大規模のCPだったように感じる。
ところで私はアーニャちゃんが受けの話のが好きなんだけど少ない……少なくない?
ノミネートNO.2
#百合なんだよなbot
――あれもこれも百合なんだよな~ッ!!!!
おそらく春ごろから積極的に使用され始めた言葉だ!
「別れ話」って百合なんだよな… #百合なんだよなbot
— 柊ひより@百合 (@hiiragi501) 2015, 3月 4
おそらくこのツイートが初出と思われる。初回から既にちょっとだけ王道から外れたチョイスであることに注目だ。
個人の感覚で百合っぽいと感じてきたものが次々と「○○って百合なんだよな」という言葉で百合要素扱いされる様は圧巻だぞ!!
特定のシチュエーションやCPを指すというよりは単に「電車」とか「残虐性」とか「夕暮れ」とか「裏切り」とか、そういう単語を勝手に百合と見做すための言葉だ。
そういう、タグをつけるだけでなんでも百合にできる手軽さが受けたことも流行った理由のように感じる。
そして百合なんだよなbotの中でも極め付けなのが
「男が好きって百合なんだよな」
だろう、一見して矛盾しているかのようにも見えるがその実、なにもおかしくはない。
この概念は次にノミネートされる言葉で急激に膾炙したように思う。
ノミネートNO.3
「響け! ユーフォニアム」
――男が好きって百合なんだよな
いわゆる2015年春アニメとして放送されたのが、この作品だ。(観る前に家族の手で録画を消されました……なので情報ミスがあったら容赦なく指摘してくれ)
京都アニメーションが制作した上質な映像もさることながらメインキャラである黄前久美子と高坂麗奈がCPとして注目された。
ここで注目したいのは久美子も麗奈もお互い意中の男性がいるということだ!
なんだよノンケかよざけんな百合じゃねえよコンチクショウレズチクショウってな反応も当然あったのだけれど、だからといってくみれいの思わせぶりな描写の数々が一切無意味なものであったとは思えない。
恋愛感情ではなかったとしても、その想いのやりとりは強烈に視聴者の心を揺さぶったのだ。
またくみれいとは別になかよし川なんかも注目されたし、百合的な支持を集めたことは間違いない。たとえ、久美子と麗奈が「ノンケ」だったとしても。
結局それが「百合なんだよな 」と定義するのはそれぞれの価値観だということだろう。ユーフォニアムが百合かどうかについては他の方の言葉を引用させて決着としたい。
「『響け!ユーフォニアム』原作はヘテロか?」と聞かれたらオレは原作全巻読んだ上で「まあそういう要素もあるよ」と答えるし、多少なりともヘテロ要素が混ざってる百合は好きじゃないって人はそりゃ仕方ないと思うけど、「原作は百合じゃない」って言われたら「なんて惨めな感性なんだ」って返すよ
— みそぎ (@misogi1341) 2015, 6月 21
ノミネートNO.4
同性パートナーシップ証明書
――差別のために科学や宗教を弄んではいけない
この国でも、同性愛者が「結婚に相当する関係」が構築可能になった。
私は「創作物での百合は現実の社会のすべてと完全にはリンクしない」と思っているが、それでもこの制度が日本に生まれた意義は大きいものだと思う。
少なくとも、これまで選択肢が無かった方々に、多少なりとも納得できる選択肢を提示できるようになったことが間違いだとは思わない。
この言葉は我々が未だに多くの偏見や差別の罠から抜け出せないでいることを見せつけてくれた。
私自身、自分が差別や偏見のない公正な人間だとはとても言えない。
迂闊な発言ばかりだし、こういう不真面目なサイトでとりあげ、言及し、語っていいニュースなのかも自信がない。
これから少しずつ、前進していくことが求められる。
人がどうしようもなく過ちを犯してしまうことを免罪符に使ってはいけないのだから。
ノミネートNO.5
一部の方々
――Extraordinary
事の発端はこちらのページにさかのぼる。
ドキドキ!プリキュアのスタッフが回顧録という形で当時のストーリーやキャラクターについて言及したのである。
そこで、とびたしたのがこの一節だった。
一方、そんな特濃なシナリオが出来あがったおかげで、一部の方々からは「レズだ!」「ドキプリ尊い!」となど絶大な評価(?)をいただくことになったわけです。楽しみかたは人それぞれですし、それ自体を否定するつもりはないのですが、敢えて言わせて貰うとするなら「そこは目指していない」ということです。
特濃なシナリオというものがどういうものかといえば
「マナ、わたしも愛してるよ」
「うるさいわね! そうよ! すきよ! あたしだってマナがすき! 悪い!?」
といった言葉が一話の間に乱れ飛ぶというカルピスの原液を更に煮詰めたようなシナリオだった。
もともとドキドキ!プリキュアは現在でも一部の方々が使用している「菱川性」というワードや相田マナを取り巻く少女達という構図など、放送当初からイケない期待を高めまくる作品だった。
そこにこんな言葉をぶつけられて正気でいられる百合厨は少なく、放送数年後、その件について言及された百合厨たちはこぞって自らを「一部の方々」と称した。
使用されていた層は決して大きくはないが、あらためて当時の衝撃を再確認できた一件だったので、ノミネートさせていただいた。
なお製作者としての意見は
プリキュアの視聴ターゲットである未就学児童は、男女の差はほとんどありません。公園でも、幼稚園でも一緒になって遊ぶし、たとえば男の兄弟がいる家庭であれば、日曜日の朝は戦隊・ライダーの流れで一緒にプリキュアを見ているハズなのです。
更に言うと、近年のプリキュアは「性」を感じさせる描写は極力避けるようにしています。彼女たちの胸はほとんどフラットですし、シャワーや水着といった肌を露出する描写も基本的にNGということになっていました。つまり、彼女たちは性を剥奪された存在なのです。
そんなプリキュアという作品の枠の中で、いくら「好きだ」「愛してる」と言ったところで、そこにはホモもヘテロも存在しません。小さい娘が「パパ大好き」というのと大差がない、とても無邪気で、無色透明で、あらゆるものに平等に注がれる愛…すなわち博愛なのです。
というものだが、同時にコメント欄では
念のために言っておくと、こっちが目指していないからといって、その答えは間違いですというつもりもないのよ。国語のテストじゃないんだから。
とも発言されておられるので、安心して一部の方々になれるというものだろう!
製作スタッフが作品の楽しみ方について言及するのはわりとデリケートな問題なので、百合厨もあまり調子に乗り過ぎない方がいいのかもしれないが……。
ノミネートNO.6
百合を司るエルダードラゴン
――伝説のクリーチャー エルダー・ドラゴン・レズビアン
6月ごろに突如として流行ったのがこの言葉だった。
百合なんだよなbotとは違い、こちらはいわゆるあるあるネタで、「百合でありがちなシチュエーション」が全てエルダードラゴンによって引き起こされているという奇想天外な着想によるものだった。
こちらもどのようなシチュエーションが発言者にとってお約束なのかを知る興味深いレポートとなる。
やはり「百合を司るエルダードラゴン」というのは長いしクドすぎたのか、わりとあっさりエルダードラゴンは上位世界(人間の意識では認識不能な空間)へと還ってしまったが……。
ノミネートNO.7
百合豚・百合厨
――百合姫の政情不安
前回の記事でも言及したが百合の愛好者を一言で指し示す言葉ない。
敢えて挙げるなら百合豚・百合厨だろうか?
これは自らを卑しめる呼称であって、他人から使われたくはないという考えを持つ人は少なくない。
そうした現状でコミック百合姫の編集部の発言と行動はあまりにも迂闊だっただろう。
蒸し返したくないので気になるなら各自調べてね! 不親切だね!
配慮に欠いていたことは疑いようもないが、百合好きな人を端的に表した言葉が無かったことも原因の一つだろう(だったら百合好きとでも言うべきではあったが)
コミック百合姫は、現時点で唯一の百合漫画雑誌であるし、それに恥じない陣容を誇っているものだと思う。硬直化していると言われがちだが、連載作品は様々な方向性を探っているし、そうした試みが無駄だとは思わない。0を1にすることは難しいものだ。
百合の解釈は広く、すべての意見を救上げることは困難だろう。それでも、百合姫やこれまでの百合アンソロはすべての百合の可能性を探し続けてきたし、これからもそうあるはずだ。
しかし、一方で百合姫Sの連載作品が凍結されたままであることなど、解決できていない問題も見受けられる。
来年には月刊化する百合姫、勝負どころではないだろうか。
ノミネートNO.8
VALKYRIE DRIVE -MERMAID-
――キュンキュンキュキュキュン!!!ウ~!!!!!ズキュン!!!!!
クソバカ下品ポルノアニメ。
30分で偏差値を10分の1にできる。
レズセックス。
この三行でヴァルキリードライヴは解説できるしそれ以上は必要ない。
処女に一目ぼれした寡黙な女戦士がレズセックスして戦うのだ!
それだけで充分だろ?
一応真面目に解説する。最新話を見てから十分に時間が経って知能が戻ったからね。
ジャンルとしては異能バトルアニメなのだが、
メインヒロインの名前が処女(とこのめ)
戦うためには性的興奮(レズセックス)で武器化するのが必要不可欠
やたら乳首が出てくる
修正光の乱れ撃ち
などなんかもうどうしようもない感じがするし実際どうしようもない。
しかし、単なるポルノアニメの設定とヴィジュアルでありながら、ところどころでやたらと百合っぽい描写が挟まってくるのが厄介極まりない。女の子を可愛いと思う女の子は正義ってことなんだろう。
正直どう転ぶかまったく予想できない(巨女回の次がミスコン回だなんて誰に分かる?)がそうしたスリルもまた一興といった感じだ。
ノミネートNO.9
「私……おねえちゃんとセックスしたい……!」(小百合さんの妹は天使)
――これからの百合を象徴する一言。
この言葉は百合が変わったことを象徴する。ちょっと大げさだけどね。
もう百合という言葉の意味は「少女同士がプラトニックで清らかな関係を結ぶ」とか「女性同士という禁断の関係性に悩む」というものだけではなくなった。
女は女に恋をして、その身体を欲するのだ。
もちろん、本作で妹が実姉にぶっちゃける前から「星川銀座四丁目」(玄鉄絢の大名作! 11月14日には「少女セクト」のコンビニコミック版も発売!)などでも「えっちしたい!」という表現は使われているが、ここで注目したいのは小百合さんの妹は天使が百合雑誌ではない雑誌で連載されていることだろう。
小百合さんの妹は天使のほかにも「あの娘にキスと白百合を」や「やがて君になる」など、百合作品として注目されている漫画が百合雑誌、百合アンソロ以外で掲載され始めている。
こうした流れの意義は大きい。百合厨ではない人間が百合を知るきっかけとなるし、百合厨以外の視点からあたらしい着想や意見が得られる機会も増えるからだ。
また、百合が「採算の取れるジャンル」と見做されてきていると信じたいところでもある。
同性パートナーシップ証明書といった社会の動き、そして葛藤や禁断がいい加減古くなってきたことから、百合は新しい百合を探して船出を始めた。
百合男子が連載された。
合法百合夫婦という作品も生まれた。
やがて君になるでは、アセクシャルを取り上げている。
社会人百合も徐々に増えつつある(ように感じる。データがないの、ゴメンな)
同性愛そのものをテーマとした作品も読めるようになった。
百合は変わりつつある。
変化を自分自身にとって好ましいものとする方法は一つ。
百合厨自身が自らの信じる百合を考察し、訴え、話し合い、表現していくこと。
そのために2015年に流行った言葉を再考することには意味があるはずだ。
2016年は近い。
これまでの流行のミームを受け継いだ、新しい流行が百合厨たちを待っている。
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