ルミナス=ブルー-まだ見ぬ百合を求めて
https://twitter.com/okome103/status/1114426108785467392
恥ずかしながら、私が「ルミナス=ブルー」を知ったのはこのtweetがきっかけだった。
端的に言って、この百合漫画は最高に面白い!
この漫画は終わってはならない。そう感じたから、紹介しようと思う。
大まかなあらすじとしては、写真部に憧れて転校してきた少女「光」は、転校先で笑顔が素敵な二人組「雨音」と「寧々」と出会う。
撮影を通して二人と仲を深めた光だったが、写真部でたった一人だけ残った「うちほ」から「雨音」と「寧々」は元々付き合っていたと知らされ――
みたいな感じだ。第一話の扉絵が、三人の関係性を象徴していると思う。
向かい合う光と寧々、そんな寧々を見つめる雨音。それが、この三人の形だ。
第一話で主要な人物はしっかり出そろっているから、あれこれ説明を聞くより、まずは一話だけでも読んでみてほしい。それで惹かれたのなら、買う価値は保証しよう。
https://www.cmoa.jp/title/170954/
ルミナス=ブルーの何が良いのかというと、繊細な画力もさることながら、「運命の二人」がクローズアップされがちな百合漫画で、重層的な感情の交差を描こうとしている点にある。
大体、こういう感じの人間関係だ*1
「雨音」と「寧々」はお互い元カノだが、関係が完全に切れたわけではなく、微妙な気持ちが残っている。
特に雨音は未練が残っていながら、その一方で幼馴染みのうちほとも並ならぬ関係になってしまっている。
百合漫画で複数カップリングを描く際は、ペアを多数登場させる方式や、あるいは三角関係が多く用いられる。*2
しかし、ルミナス=ブルーはより複雑で入り組んだ関係を提示してきている。
東兎角と一ノ瀬晴
高山春香と園田優
白峰あやかと黒沢ゆりね
野間みみかと柚子森楓
小糸侑と七海燈子
固定されたペア、運命の二人を描く百合漫画はメタな読み方をすれば、大抵は結ばれる(最後はどうなるのか分からないけど……)。三角関係というのも、あくまでもメインのカップリングの障害であったりドラマを生み出すためのものになりがちだ。
しかし、不均衡なまま、仲が良い三人組という形で構築されたルミナス=ブルーの関係性は、とても危うい。分れたはずの雨音と寧々が関係を修復するかもしれないし、光が雨音に気持ちを打ち明けるかもしれない。
様々な秘密を隠しているうちほが激しく三人の感情を揺さぶってくるかもしれない。
この先がどうなるのか分からない。これは、とても魅力的だと思う。
この二人は結ばれるというお約束の元で楽しむ百合もいいものだけど、先が分からない未知の領域に踏み出すことも、スリルや感動があるものだとおもう。
ルミナス=ブルーは、まだ見ぬ百合を求める冒険だ。
この四人の関係を描ききるには、多くのページが必要になるだろう。不本意な形でこの冒険が終わるのは、本当に惜しい。
運命の二人が分からないままで走りきってこそ、この百合が飽和した時代に「新しい百合」が生まれると私は思う。
だから、少しでも興味があるなら時間とお金をこの作品に割いてほしいとおもう。
刺激的なわくわくするような新しい冒険が、楽しめるはずだから。
こっからは自分語り!!!帰っていいぞ!!!!!
百合界がかなり賑わってきた一方で、百合と言うだけではもはや宣伝たり得ない時代が来ている。
我々は追い切れないほど多くの百合に囲まれていて、選択する権利が与えられた。もはや突然のヘテロ展開に怯えながら、爆弾処理みたいにページをめくる必要もない。
その一方で、供給と需要に対して宣伝や周知が間に合っていないようにも感じる。
宣伝というのは作家だけが負うべき仕事ではないし、少年ジャンプのような最大規模の資本と土壌がないのに二巻で打ち切りを決めてしまう方針は疑問に感じる。それは、作家の使い捨てに等しい行為だろう。
かつて、私は百合姫編集部で働こうとして面接を受けたことがある。
結果は残念ながら不合格だったけれど、そこで百合姫の編集さんが言っていたことは今でも覚えている。
「今は、兼業しなければやっていけない作家も多く、そうした作家のみんなが百合漫画でやっていけるようにしたい。それが百合姫を月刊にする理由だ」
この数年で、百合はとてもとても広まったとおもう。百合展は毎年、来場者が増えている。百合アニメや百合ドラマも生まれつつある。百合姫以外の雑誌で百合アンソロジーが出たり読み切りが掲載されるようになった。
そうした中で、百合の最前線である百合姫が百合作品の可能性を探らず、すぐに見限ってしまうのは残念に思う。
たしかに、市場が大きくなれば競争が生まれ、そこから淘汰される作品があるのは仕方ないことだ。
けれど、たった二巻で打ち切られ、次がどうなるのかも分からない環境に置かれている百合姫の作家は果たして「百合漫画でやっていけている」だろうか?
百合姫の編集部は、かつて私に語った志を今一度思い出していただきたい。
才能を発掘し、作家を育て、新しい百合を作り出すことは商業でこそ可能な試みだと思うから。